【CF計算書】② 総論Part2

 今回は、前回の総論Part1の続きで、総論Part2となります。今回もCF計算書の作成および監査を行う中で、注意すべき点を解説していこうと思います。

【引当金の取り扱いについて】

 引当金の増減額は営業活動によるCFにおいて加減算します。また、当期に計上していた引当金から未払金等の確定債務勘定へ振替を行うことがあります。この場合、引当金は減少したものの、キャッシュアウトフローは発生していません。そのため、このような場合は、引当金の増減額の調整を行うとともに、未払金勘定等の増減額も調整することで、適切なCFが算定できます。

 災害損失引当金等を特別損失項目として計上し、実際に支出があった場合、特別損失として計上した金額を営業活動によるCFにて調整するとともに、実際の支出額を小計より下で調整することになります。

 なお、小計欄以下の項目には、「災害による保険金収入」、「損害賠償金の支払」、「巨額の特別退職金の支給」、「補償金の受取額」、「災害損失の支払額」、「和解金の支払額(受取額)」、「課徴金の支払額」、「補助金の受取額」などがあります。

 こちらに記載した科目以外にも、金融庁が公表している「タクソノミ」に科目名の例示があるため、そちらにて会社の状況に適して科目を選定すると良いかと思います。

【為替差損益の取り扱いについて】

外貨建取引により生じた為替差損益は以下の3つのパターンに応じて、CF計算書において調整方法が異なります。

①営業活動に係る資産・負債から生じた為替差損益
②投資活動・財務活動に係る為替差損益
③外貨建の現金及び現金同等物に係る為替差損益

これらのそれぞれの取り扱いは以下の通りです。
【営業活動に係る資産・負債から生じた為替差損益】

営業活動に係る資産・負債から生じた為替差損益については、キャッシュの流入・流出を伴わない非資金取引であるため、税引前当期純利益に含まれている為替差損益として調整します。ただし、営業活動によるキャッシュフローにおいて記載される為替差損益の影響額から売掛金等の営業債権から生じているものの影響を控除する必要がありますので、ご注意ください。
【投資活動・財務活動に係る為替差損益】

投資活動・財務活動に係る損益計算書も非資金取引であるため調整が必要です。投資・財務活動に関する為替差損益は、別途調整を行わない限り税引前当期純利益に含まれている為替差損益を除くことはできないため、為替差損益を個別に営業活動によるCFにおいて加減算する必要があります。
【外貨建ての現金および現金同等物に係る為替差損益 】

 外貨建の現金および現金同等物等から生じる為替差損益は円貨の現金及び現金同等物を増減させるものである。この項目から発生した為替差損益は、営業、投資、財務活動によるCFとは別に、「現金及び現金同等物に係る為替差損益」として区分表示されます。

【資金調達に係るキャッシュフローの取り扱いについて】

 「社債の発行による収入」や「株式の発行による収入」は財務活動によるキャッシュ・フローの区分に表示されます。ここで、社債や新株を発行した際の社債発行費や株式交付費に重要性がある場合、CF計算書上、実質手取額で収入金額が表示されます。なお、これに重要性がない場合には、CFを総額で表示することができます。(実務指針40項)

【自己株式の取得および処分に関する付随費用の取り扱いについて】

「自己株式の取得による支出」や「自己株式の処分に係る収入」は財務活動によるCFの区分に記載されます。また、取得及び処分に関する付随費用が発生する場合は、取得原価およ処分価額から加減算することが一般的です。

 ここで、自己株式取得費用が全額費用処理されている場合は、営業活動によるCFにて自己株式取得費用を加算し、財務活動によるCF区分に「自己株式取得による支出」で減算することで自己株式の取得にかかる支出を算定します。

【まとめ】

 以上でCF計算書作成の際の注意点についての解説は終了します。次回以降はCF計算書作成の際の個別論点について解説していきますので、そちらもご覧いただけると嬉しいです。
【参考文献等】
■新日本監査法人HP:https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/theme/cash-flow/
■設例でわかるキャッシュ・フロー計算書の作り方Q&A
■連結財務諸表等におけるキャッシュフロー計算書の作成に関する実務指針

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

公認会計士です。都内の監査法人に勤務しています。会計/監査/税務に関する情報を配信していきます。