差入保証金の会計処理

差入保証金とは、不動産の賃貸借取引を締結する際に、借主が貸主に対して、敷金、保証金、権利金及び建設協力金などの名目で差し入れる金銭をいいます。

今回はこの差入保証金の会計処理と、表示上の注意点について解説していこうと思います。

(1)差入保証金の種類

差入保証金の主な種類は、①敷金及び保証金、②権利金、③建設協力金があります。このそれぞれの内容は下記の通りです。
①敷金及び保証金

賃借料等の債務を担保するために借主が貸主に預託する金銭。賃貸借契約期間終了後は未履行の債務を精算した後の金額が返還される。

敷金及び保証金は賃貸借期間終了後に返還されることが定まっていることから、差入額をもって資産計上する。

賃貸借契約期間終了後は、借主側が原状回復費用などを履行し、物件を貸主側に返還した時点で残額の敷金及び保証金の返還を受けるため、敷金及び保証金から未収入金などの勘定科目に振り替えます。

また、敷金及び保証金のうち、賃貸借契約により、将来返還されない部分の取り決めがある場合は、不返還部分を長期前払費用として資産に計上し、契約期間にわたり定額法により償却します。
②権利金

不動産の賃貸借契約の締結の際に借主から貸主に対して交付される金銭。賃貸借契約の解約の際に返還されない部分である。礼金とも呼ばれます。

権利金は賃貸借契約終了の際に返還されないものであるため、上記敷金及び保証金のうち、将来返還されない部分の取り決めがある場合の処理と同様の処理を行います。
③建設協力金

賃貸借物件を建設するための資金に充当するために、借主が貸主に預託した金銭です。賃貸借契約書で定められた返済条件に従って貸主から借主に返還されるものです。

建設協力金の経済的実態は、金銭穂貸付と同様です。建設協力金の会計処理は、「金融商品会計に関する実務指針」第133項に定められています。

この具体的な処理については次の章で見ていきます。

(2)建設協力金の会計処理

①建設協力金の認識について

将来返還される建設協力金等の差入預託保証金の当初認識は、実際の差入金額ではなく、時価で計上します。時価とは、返済期日までのキャッシュフローを一定の割引率で割り引いた現在価値となります。
②割引率について

建設協力金の差入企業が対象となった土地建物に抵当権を設定する場合には、原則として、リスクフリーの利子率を使用します。
③差入金額と時価との差額の取り扱い

長期前払家賃として計上し、契約期間にわたって配分し、支払賃料として計上します。
④差入保証金の評価について

差入保証金について、一般にその返済期間が長期間にわたることが多い。そのため、返済予定期間までの間で貸主側の財政状態や資金繰りが悪化し、返済時期になっても借主に返済されないことがあります。このような場合には、差入保証金の資産性が問題となるため、下記のような対応を行います。

→営業中の物件については、貸主の返済能力を評価し、回収不能と見込まれる部分に貸倒引当金を設定します。なお、担保または保証がある場合には、担保の処分見込額及び保証による回収見込み額を控除した残高に対して貸倒引当金を設定することになります。

→すでに解約済みの物件の場合は、解約後の入金のないものについては回収可能性を勘案して、未収入金、長期未収入金等の科目に振り替えます。その際は、貸倒引当金の設定の要否を検討する必要があります。

(3)まとめ

今回は差入保証金の内容について解説してきました。差入保証金の内訳は、敷金及び保証金、権利金、建設協力金等があります。これらの資産は金融商品時価注記の対象となります。今後、差入保証金の金融商品時価注記上の取り扱いについても解説していこうと思います。

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公認会計士です。都内の監査法人に勤務しています。会計/監査/税務に関する情報を配信していきます。