関連当事者について

関連当事者とは、ある当事者が他の当事者を支配しているか、または他の当事者の財務上及び業務上の意思決定に重要な影響を有している場合の者を言います。

関連当事者を開示することの意図は、会社と関連当事者との取引や関連当事者の存在が財務諸表に与えている影響を財務諸表利用者が把握できるように、適切な情報を提供するという意味があります。

今回は関連当事者の範囲や、関連当事者注記の留意点を解説しようと思います。

(1)関連当事者の開示のフロー
(2)関連当事者の範囲
(3)対象の取引
(4)対象取引の重要性の把握
(5)まとめ

(1)関連当事者の開示のフロー

関連当事者の開示のフローは下記の通りです。

①関連当事者の範囲の把握
②対象取引の取引の把握
③対象取引の重要性の把握
④開示対象

上記のフローで関連当事者の開示対象か否かを判定していきます。それでは、各開示フローの内容について見ていきます。

(2)関連当事者の範囲

関連当事者は、企業から見て、支配しているもの、支配されているもの、また、影響力を与えているものと受けているもののいずれかであるといえます。

この考え方を基本としながら、関連当事者の開示に関する会計基準第5項(3)に記載されている関連当事者を見るとしっくりとくるかと思います。
【関連当事者の開示に関する会計基準第5項(3)】
① 親会社
→親会社には、親会社の親会社も含まれます。
② 子会社
→子会社には、子会社の子会社(孫会社)も含まれます。
③ 財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社
→同一の親会社をもつ会社とは、いわゆる兄弟会社のことです。
④ 財務諸表作成会社が他の会社の関連会社である場合における当該他の会社(以下「その他の関係会社」という。)並びに当該その他の関係会社の親会社及び子会
⑤ 関連会社及び当該関連会社の子会社
⑥ 財務諸表作成会社の主要株主及びその近親者
⑦ 財務諸表作成会社の役員及びその近親者
⑧ 親会社の役員及びその近親者
⑨ 重要な子会社の役員及びその近親者
⑩ ⑥から⑨に掲げる者が議決権の過半数を自己の計算において所有している会社及びその子会社
⑪ 従業員のための企業年金(企業年金と会社の間で掛金の拠出以外の重要な取引を行う場合に限る。) 
上記の11項目全てを盛り込むことはできませんが、サザエさんファミリーをもとに留意点について考えていこうと思います。(これは雑談レベルの記載なので、お時間がない場合は読み飛ばしてください。)

主人公をタラちゃんとした場合下記の通りになります。
①親会社(サザエさん、マスオさん)
→親会社の親会社(波平さん、フネさん)

②子会社(タラちゃんの子供(サザエさんの漫画では出てきません))
→子会社の子会社(タラちゃんの孫)

③ 財務諸表作成会社と同一の親会社をもつ会社 (タラちゃんの兄弟(サザエさんの漫画では出てきません))
上記では11項目を網羅的に記載することはできませんでしたが、このサザエさんファミリーで例えたことの目的は、カツオやワカメが出てこない点に留意が必要という点です。カツオやワカメが関連当事者として認められるためには、カツオやワカメが関連会社に該当すると判断された場合です。

関連会社とは、会社および当該会社等の子会社が、出資、人事、資金、技術、取引等の関係を通じて、子会社以外の他の会社等の財務および営業または事業の方針の決定に対して重要な影響を与えることができる場合における当該他の会社等をいいます。
関連会社の範囲がわからなくなったら、家族構成に例えて考えてみると、範囲がよく見えてくるかもしれませんので、一度お試しください。

(3)対象の取引

関連会社との取引は、会社と関連当事との取引をいい、対価の有無にかかわらず、資源もしくは債務の移転、または役務の提供をいいます。また、関連当事者が第三者のために会社との間で行う取引や、会社と第三者との間の取引で関連当事者が当該取引に関して会社に重要な影響を及ぼすものを含みます。
開示対象取引を特定するための留意点を下記に記載いたします。

①連結財務諸表を作成するにあたって相殺消去した取引は、開示対象の取引とはならない。
②無償または低廉な価格での取引は、実際の取引価格ではなく、独立第三者間取引であったと仮定した場合の金額を見積もって重要性判定を行った結果、重要性が高い場合。
③形式的・名目的に第三者を経由した取引で、実質上の相手先が関連当事者であることが明確な場合。
反対に、関連当事者との取引であっても、下記の場合は開示対象外となります。

①一般競争入札による取引ならびにと金利息および配当の受け取りその他取引の特性からみて取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引。
→こちらの取引が、関連当事者が独立した第三者と同一の条件で行ったことが明白なため、会社に不利益が生じていないことが明らかであるため、開示の対象とはなっておりません。
②役員に対する報酬、賞与および退職慰労金の支払
→役員報酬額は、非財務情報である、コーポレートガバナンスに関する情報の中で役員報酬の内容の開示を規定していることから、開示対象外となっています。
→開示対象外となる役員報酬の範囲は、会社法361条等にいう報酬等を指すため、会社法上の要件を満たさない役員報酬は開示対象かどうかを判断する必要があります。
→ただし、役員報酬に含まれない取引であっても、その取引が従業員としての立場で行われていることが明らかな取引は開示対象外となります。
→役員にストックオプションを付与する場合は、ストックオプション等に関する会計基準により役員報酬として会計処理されるため、関連当事者の取引は開示対象外となります。ただし、ストックオプションの行使は、役員報酬に該当せず、資本金等が増加する資本取引となるため、開示対象となります。
関連当事者との取引の開示対象期間は、連結会計年度または事業年度の途中において関連当事者に該当することになった場合、または関連当事者に該当しなくなった場合には、関連当事者であった期間中の取引が開示対象となります。

(4)対象取引の重要性の把握

関連当事者との取引のうち、重要な取引が開示対象となります。重要性の判断については、関連当事者の開示に関する会計基準適用指針第13項から18項および20項に基準が記載されています。この数値基準は、開示の公正性の観点から定められているものと考えられています。
関連当事者との取引の開示に関する重要性の判断基準は、関連当事者を分類した4つのグループごとに、取引内容に応じて定められています。関連当事者との取引が開示が必要かどうかの判断は、関連当事者が所属するグループの判定、関連当事者と行った取引の分類により判断します。
4つのグループは下記の4グループである。
①親会社及び法人主要株主等
②関連会社
③兄弟会社
④役員及び個人主要株主等
関連当事者との取引のうち、開示対象となる取引は損益計算書項目に属する科目にかかる取引、貸借対照表に属する科目にかかる取引が対象となり、重要性判定基準が設けられております。

具体的な重要性判定基準は関連当事者の開示に関する会計基準適用指針15項から19項をご参照ください。

なお、重要性の判断は、取引ごとに行うため、一つの取引において売上高が重要であれば、売掛金残高に重要性がない場合でも、売上高及び売掛金の両者の開示が必要になります。

(5)まとめ

関連当事者との取引において難しいのは、関連当事者を網羅的に把握し、かつ、関連当事者との取引を網羅的に把握することです。そのため、事前に十分な説明を行い、情報収集が可能な体制を構築しておくことが重要となります。また、関連当事者の範囲は形式的に判断するのではなく、実質的に判断する必要があります。また、関連当事者との取引については、会社法計算規則と財務諸表等規則で異なる点があることにもご留意ください。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

公認会計士です。都内の監査法人に勤務しています。会計/監査/税務に関する情報を配信していきます。