平成31年度税制改正では、消費税率の引き上げに際し、需要変動の平準化等の観点から住宅と自動車に対する税制上の支援策を講ずるとともに、デフレ脱却と経済再生等を確実なものとするため、研究開発税制の見直し等を行なっています。今回は、税制改正の内容と、その中で重要なものを解説していこうと思います。 |
税制改正の内容
①個人所得課税 ・住宅ローン控除の拡充 ②資産課税 (1)個人事業者の事業承継税制の創設 (2)事業用の小規模宅地特例の見直し (3)教育支援の一括贈与非課税措置の見直し (4)結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し ③法人課税 (1)イノベーション促進のための研究開発税制の見直し (2)中堅・中小企業の持続可能な発展のための地方税体系の構築 ④消費課税 (1)車体課税等の見直し (2)外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し(臨時販売場制度の創設) ⑤国際課税 ・BEPS(税源侵食と利益移転)プロジェクトを踏まえた対応 ⑥納税環境整備 (1)金地金等の密輸に対応するための消費税における仕入れ税額控除の見直し (2)経済取引の多様化に伴う納税環境の整備(情報照会手続の整備) (3)電子帳簿保存およびスキャナ保存制度の見直し |
今回はこの中から影響を受ける方が多いと考えられる2点について解説していこうと思います。 |
個人所得課税 住宅ローン控除の拡充について
はじめに、住宅ローン控除とは、マイホームをローンで購入した場合において、一定の割合に相当する金額が所得税から控除される制度のことをいいます。 住宅ローン控除制度の詳細については後日解説いたします。 |
住宅ローン控除の拡充は、消費税率の引き上げに際し、需要変動の平準化の観点から、住宅に関する税制上の支援を目的としています。 この住宅ローン控除の拡充の対象は、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に居住の用に供した場合に適用します。 |
改正内容は下記の通りです。 ・消費税率10%が適用される住宅取得等について、住宅ローン控除の控除期間を3年延長(改正前:10年間→修正後:13年間)。 ・11年目以降の3年間については、消費税率2%引き上げ分の負担に着目した控除額の上限を設定しています。 具体的には、各年において、以下のいずれか少ない金額を税額控除します。 ①建物購入価格の2/3% ②住宅ローン年末残高の1% →3年間で消費税増税分にあたる「建物購入価格の2%(2/3%×3年)の範囲で減税を行います。ただし、ローン残高が少ない場合にはこれまで通り住宅ローン年末残高に応じて減税します。 |
(注1)建物購入価格、住宅ローン年末残高の控除限度額は一般住宅の場合4,000万円、認定住宅の場合は5,000万円(改正前の制度と同水準)。 (注2)入居11から13年目にしても、所得税額から控除しきれない額は、改正前の制度と同じ控除限度額(所得税の課税総所得金額等の7%(最高13.65万円)の範囲で個人住民税から控除。なお、個人住民税の減収額が全額国費で補填。 (注3)入居1〜10年目は改正前の制度と同様の税額控除。 |
資産課税 (3)教育資金一括贈与非課税措置の見直し
教育資金一括贈与の非課税措置とは、平成25年4月1日から2019年3月31日までの間に、祖父母などから30歳未満の子や孫に教育資金を一括して贈与する場合は、1人当たり1,500万円まで非課税となるという制度です。これは、高齢者に偏る金融資産を若年層に移転させる狙いがあるとされています。 |
平成31年度の税制改正により、受贈者の所得要件の設定や、使途の見直しを行う一方、30歳以上の就学継続には一定の配慮を行い、適用期限を2年延長しています。変更点について、下記に改めて記載いたします。 ・受贈者の所得要件について 贈与があった年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、適用できないこととなりました。 ・教育資金の範囲について 23歳以上のものの教育資金の葉にについて、 ①学校等に支払われる費用 ②学校等に関連する費用(留学渡航費等) ③学校以外の者に支払われる費用で、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するために支払われたもの に限定することとされました。 ・残高に対する贈与税の課税について 30歳達成時において、現に①学校等に在学し又は②教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合には、その時点で残高があっても、贈与税を課税しないこととします。 その後、①又は②に相当する期間がなかった年の年末に、その時点の残高に対して贈与税を課税することとします。(ただし、それ以前に40歳に達した場合には、その時点の残高に対して贈与税を課税することとします。) ・贈与者死亡時の残高について 贈与者の相続開始前の3年以内に行われた贈与について、贈与対象者の相続開始日において受贈者が次のいずれかに該当する場合を除き、相続開始時におけるその残高を相続財産に加算することとしています。 ①23歳未満である場合 ②学校等に在学している場合 ③教育訓練給付の給付対象となる教育訓練を受講している場合 |
まとめ
今回解説した住宅ローン控除については、今後住宅の購入を考える場合には制度があるということだけでも認識していただければと思います。また、新たな制度等が創設された場合には、制度の内容を詳細に知らなくとも、制度の概要だけでも認識しておくと、今後税制等で有利な選択ができることが多くなると思います。 |
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