在外子会社のキャッシュ・フロー計算書の作成の際に換算レートと為替換算調整勘定の取り扱いが論点になります。そこで、今回は在外子会社のキャッシュフロー計算書の作成について解説していきます。 |
【在外子会社のキャッシュ・フロー計算書】
在外子会社における外貨によるキャッシュ・フロー計算書は「外貨建取引等会計基準」における収益及び費用の換算方法に準じて換算されます。つまり、キャッシュ・フロー計算書の営業活動、投資活動、および財務活動によるキャッシュ・フローについては、当該在外子会社の収益及び費用の換算に用いられた為替相場、すなわち、期中平均為替相場または決算時の為替相場のいずれかで換算します。 「現金及び現金同等物の期首残高」は、前会計期間の決算時の為替相場、「現金及び現金同等物の期末残高」は、当会計期間の決算時の為替相場による円換算額を付すことになります。 また、配当金、増資等の資本取引に関連するキャッシュ・フローについては、当該キャッシュ・フローの発生時の為替相場による円換算額を付すことになります。(実務指針17項) |
【為替換算調整勘定の分析について】
連結キャッシュ・フロー計算書を簡便法により作成し、かつ「営業活動によるキャッシュ・フロー」を間接法により表示している場合は、在外子会社の円換算後の資産及び負債の増減額を利用してキャッシュ・フローの金額を算出します。 ここで、在外子会社の円換算後の貸借対照表においては、前期末及び当期末の資産及び負債はそれぞれの決算時の為替相場で換算されているため、円換算後の資産及び負債の増減額には為替相場の影響額が含まれます、しかし、これらはキャッシュ・フローを伴うものではないため、この影響を除去する必要があります。 |
例えば、在外子会社の商品の販売による収入を期中平均相場により換算した売上高に、当期首の円貨による売上債権に加え、当期末の円貨による売上債権を控除して求めた場合の円貨額は、商品の販売による収入を期中平均相場で換算した場合と差異が出ます。 この差異は、在外子会社の財務諸表を円換算した際に生じた為替換算調整勘定の増減額の一部を構成しているため、原則として為替換算調整勘定増減額の分析を行うことにより調整する必要があります。 なお、在外子会社の表示区分ごとのキャッシュ・フローに重要性がない場合又は為替相場の変動による影響額は重要でないと認められる場合には、当該調整を行わずに、「現金及び現金同等物にかかる為替差額」に含めて表示することができるものとされています。(実務指針18項) |
【実務上の注意点】
簡便法で各社の個別ベースのキャッシュ・フロー計算書を作成書を作成する手間は生じないが、在外子会社における換算差額は各在外子会社単位で算定する必要があります。 例えば、固定資産や借入金等のように取引別に換算する必要がある項目については、各社の各項目に係る増減明細表単位で換算する必要があるため、相応の手間がかかります。 ただし、実務上は、親会社との取引にかかる換算差額に重要な影響がない場合は、当該換算差額をまとめて現金及び現金同等物にかかる換算差額として処理することが認められています。(実務指針44項) |
【まとめ】
今回は在外子会社のキャッシュ・フロー計算書について解説させていただきました。在外子会社がある場合には為替換算調整勘定が適切に処理されていることを確認する必要があります。また、四半期ごとにキャッシュ・フロー計算書を作成している会社については、期中平均為替相場の算出方法が意外と論点になることがありますので、そちらにもご注意いただければと思います。 |
【参考文献等】 ■新日本監査法人HP:https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/theme/cash-flow/ ■設例でわかるキャッシュ・フロー計算書の作り方Q&A ■連結財務諸表等におけるキャッシュフロー計算書の作成に関する実務指針 |
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