はじめに、CF計算書は一会計期間におけるキャッシュフローの状況を一定の活動区分別に表示するものであり、貸借対照表及び損益計算書と同様に企業活動全体を対象とする重要な情報を提供するものである。(連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準二) CF計算書を作成する目的は、その名の通り、企業集団の一会計期間におけるキャッシュフローの状況を報告することにあります。今回は、このキャッシュフロー計算書の概要について解説していきます。 |
目次
キャッシュフロー計算書の資金の範囲について
CF計算書において、資金の範囲は、「現金及び現金同等物」とされている。現金とは、手許現金及び要求払預金(預金者が一定の期間を経ることなく引き出すことができる預金)をいいます。 |
会計方針の変更及び表示方法の変更について
CF 計算書において、資金の範囲を変更した場合は会計方針の変更として取り扱います。この場合、過年度遡及会計基準にしたがって、新たな資金の範囲に基づく会計方針を、過去の期間に適用します。(会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準 6項,7項) 変更の影響が比較情報へと反映され、その累積的影響額が表示期間の最も古い期間の期首残高で調整されることが原則となります。 この場合の注記事項としては、①当該会計方針の変更の内容、②当該会計方針の変更を行った正当な理由、③財務諸表の主な科目に対する前事業年度における影響額を、注記することとされている。なお、重要性が乏しいと判断した場合には注記は不要です。 また、前事業年度における影響額を記載するにあたっては、「変更の影響を受けた各表示区分の合計額」、「現金及び現金同等物の増減額」、及び「変更の影響を受けた各表示区分の合計額」、「現金及び現金同等物の期末残高」に与える影響を記載するとされています。(連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の作成に関する実務指針30項) |
以下の場合は、表示方法の変更に該当する。 |
法人税等の表示区分について
法人税等の支払額は、営業活動によるCFの小計欄以下に「法人税等の支払額」として一括して記載されます。なお、事業税のうち、付加価値割額及び資本割額等の外形標準課税分については、損益計算書において販管費及び一般管理費に計上するものであり、法人税等には含まれず、租税公課として計上されています。そのため、これらの項目は営業活動によるCFの小計欄より上にて調整を行います。 また、未払法人税等のうち事業税(外形標準課税分)にかかる増減額は先に記載した通り、営業活動によるCFで調整します。そのため、小計欄以下の「法人税等の支払額」を算定する際には、未払法人税等に含まれる外形標準課税分を控除する必要がある点に注意が必要である。 なお、法人税等の支払額に含まれないものとして、実務指針10項には以下のものが記載されています。 ●電気供給事業に係る事業税 ●ガス供給事業に係る事業税 ●生命保険事業および損害保険事業に係る事業税 |
棚卸資産の評価について
棚卸資産の収益性が低下した場合、簿価切り下げ額を損益として計上することになります。この損益は、資金の動きを伴わない非資金損益項目であることから、CF計算書を作成する上で調整が必要になります。 ここで、棚卸資産の増減額は営業活動において加減算される項目です。そのため、棚卸資産の収益性の低下に係る損益や棚卸差異を計上したことによる棚卸資産の変動額は棚卸資産の増減額にすでに織り込まれたうえでCF計算書上に加減算されています。そのため、CF計算書上において別途調整する必要はありません。 |
営業債権の貸倒損失等の取り扱いについて
営業債権から生じた貸倒損失は棚卸資産の場合と同様で、売掛金の増減額に既に織り込まれているため、別途調整は不要です。一方、貸付金のような営業活動以外の取引からも貸倒損失が発生します。これらの項目に関連して発生した貸倒損失は売掛金等のように調整が行われていないため、関連する貸倒損失を個別に営業活動によるCFにて調整する必要があります。 |
まとめ
今回はCF計算書作成の目的や、CF計算書作成の際の注意点について解説させていただきました。作成の際の注意点が今回解説させていただいた事項以外にもありますので、そちらは総論②にてご確認いただければと思います。 |
【参考文献等】 ■新日本監査法人HP:https://www.shinnihon.or.jp/corporate-accounting/theme/cash-flow/ ■設例でわかるキャッシュ・フロー計算書の作り方Q&A ■連結財務諸表等におけるキャッシュフロー計算書の作成に関する実務指針 |
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