経営者確認書について

 経営者確認書とは、監査意見を表明するにあたって、経営者から入手する書類のことを言います。経営者確認書を入手することは、監査手続の一つです。経営者確認書確認書は、①経営者の「財務諸表作成責任」と公認会計士の「監査意見に対する責任」を明確にすること(二重責任の原則)と、②両者が相互に協力しあうことによって、真実かつ公正な財務諸表を提供し、合わせて監査制度に対する社会的信頼性を高める対応の一つとされています。

今回は、経営者確認書を入手することの目的や入手時期について解説していきます。

(1)経営者確認書を入手することの目的
(2)経営者確認書入手の際の留意事項
(3)まとめ

(1)経営者確認書を入手することの目的

経営者確認書を入手する目的は、監査基準委員会報告書大3号によると下記のように記載されております。

①財務諸表作成責任が経営者にあることの確認
→「二重責任の原則」を確認する目的を示しています。

②内部統制を構築・維持する責任が経営者にあることの確認
→財務諸表の作成目的のために内部統制を構築し維持する責任は経営者にあることを確認する、さらには再認識させるという目的。

③監査の実施に必要な全ての資料が監査人に提供されたことの確認
→監査人が必要とする全ての資料がいかなる制約もなく経営者から監査人に提供されたことを確認する目的

④重要な偶発事象、後発事象に関する確認
→財務諸表に重要な影響を及ぼすような重要な偶発事象、後発事象等について、その有無、内容等を確認する目的。

⑤監査実施時の確認事項について文書による再確認及び追加確認
→監査の実施の過程で行なった質問に対する経営者の高騰による回答について、曖昧さや誤解を避けるために再確認するとともに、その後監査報告書作成日までの間に変化がなかったことを追加確認する目的。

⑥経営者の意思や判断に依存している事項についての確認
→経営者の意思や判断に依存している事項については、経営者の主観的要素や見積要素に負うところが大きいものについて、その内容と根拠を確認する目的。

⑦監査人が発見した未訂正の財務諸表の虚偽表示による影響が、個別に集計しても財務諸表全体にとって重要でないことの確認
→財務諸表の作成責任に関して、監査人が発見した虚偽表示のうち、未訂正の虚偽表示による影響が、財務諸表全体にとって重要でないと経営者が判断していることを確認するという目的。

(2)経営者確認書入手の際の留意事項

①監査人が草案を作成し、経営者に内容の説明を行って事前に了承を求めなければならない。

②経営者確認書は簡潔かつ明瞭に表現し、曖昧な表現や助長な記述は避けなければならない。

③確認すべき事項が、監査契約、経営環境、財務諸表の種類、会計方針、会社の置かれている状況等により異なる。

④経営者確認書は、監査報告書の交付日に入手しなければいけない。

⑤経営者確認書は、監査報告書を提出する場合には、その都度、入手しなければならない、つまり、会社法監査と金融商品取引法監査を受けている場合は、それぞれについて経営者確認書が必要になる。

⑥経営者確認書には、会社の代表取締役または代表執行役の署名が必要である。当該代表取締役または代表執行役以外の取締役または執行役が財務諸表の作成業務を担当する部署を所管している場合には、当該取締役または執行役の署名が併せて必要になる。

(3)まとめ

 経営者確認書を入手する目的や、経営者確認書の記載内容について記載させていただきました。こちらでも記載している通り、経営者確認書は監査証拠の一つであるため、経営者が確認を拒否した場合は、監査範囲の成約となり、監査人は意見を限定する又は意見を表明しないことを検討することになる。また、経営者が確認を拒否した事項が財務諸表監査の前提となるような事項である場合は、原則として監査人は意見を表明しない。

監査人が経営者確認書を作成する際に特に注意しなければいけないことは、上記の目的の⑦に記載した、未訂正の虚偽表示がある場合の記載方法を十分に検討する必要がある点です。

また、経営者確認書の入手タイミングについても十分留意する必要があるかと思います。

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ABOUTこの記事をかいた人

公認会計士です。都内の監査法人に勤務しています。会計/監査/税務に関する情報を配信していきます。