研究開発費の資産計上について

日本基準では、研究開発費は発生時に費用処理するとされております。これに対し、IFRSでは、研究費は発生時に費用処理とされていますが、開発費はISA第38号第57項の6要件をを全て立証できる場合に限り、無形資産として認識するとされています。今回は、この6要件の解説をメインに行っていこうと思います。

(1)ISA第38号「無形資産」について
(2)研究開発費について
(3)まとめ

IAS第38号「無形資産」について

ISA第38号「無形資産」は無形資産の会計処理に関する取扱いを規定することを目的としており、具体的には、特定の要件を満たす無形資産を財務諸表で認識測定するための方法を明確にしている。
ここで、ISA第38号は、原則として全ての無形資産に関する会計処理に適用される。ISA第38号では、資産とは「過去の事象の結果として企業が支配し、かつ、将来の経済的便益が企業に流入することが期待される資源」と定義されています。無形資産は、このように定義された資産のうち、物質的実体のない識別可能な非貨幣性資産である。
支配とは、将来の経済的便益を獲得する力を有し、かつ、他者による便益の利用を制限する能力をいいます。

識別可能性とは、①分離可能であること。すなわち、企業から分離または分割でき、独立にまたは関連する契約や識別可能な資産または負債と一体として、売却、譲渡、ライセンス、賃貸または交換ができることを言います。また、②それらの権利が譲渡可能又は企業が他の権利又は義務から分離可能であるか否かに関わらず、契約その他法的な権利に起因するものであることとされております。
無形資産は以下の場合にのみ認識します。

①資産に起因する、期待される将来の経済的便益が流入する可能性が高い。
②当該資産の取得原価が信頼性を持って測定できる。

(2)研究開発費について

研究とは、新規の科学的又は技術的な知識および理解を得る目的で実施される基礎的および計画的調査を言います。これに対し、開発とは、商業生産又は使用の開始以前における、新規又は大幅に改良された材料、装置、製品、工程、システム又はサービスによる生産のための計画又は設計に対する、研究成果又は他の知識の応用を言います。
開発、又は内部プロジェクトの開発局面で生じた無形資産は企業が下記の6要件の全てを立証可能な場合にのみ、内部創出無形資産として認識しなければいけません。
①使用又は売却できるように無形資産を完成させることの技術上の実行可能性。
②無形資産を完成させ、さらにそれを使用又は売却するという企業側の意図。
③無形資産を使用又は売却できる能力。
④無形資産が可能性の高い将来の経済的便益を創出する方法。とりわけ企業は、無形資産の産出物の、又は無形資産それ自体の市場の存在を、あるいは無形資産を内部で使用する予定である場合は、無形資産の有用性を立証しなけらばならない。
⑤無形資産の開発を完成させ、更にそれを使用又は売却するために必要となる、適切な技術上、財務上およびその他の資源の利用可能性。
⑥開発期間中の無形資産に起因する支出を信頼性を持って測定できる。
なお、上記の開発又は開発局面で生じた無形資産の認識要件は容認規定ではなく、強制規定となっているのでご留意ください。また、全ての要件について、企業が積極的に立証しなければいけない点もご留意ください。

(3)まとめ

開発費の資産計上を判断するためには、企業が行なっている社内の研究開発プロジェクトの実情に照らし、どのような内部的な承認手続および証跡等をもって、それぞれの要件に関する証拠とするかをあらかじめ検討しておく必要があります。

このように、開発費に関しては、IFRSと日本基準では取扱いが異なるため、IFRS を適用する場合は、6要件を満たしているかを検討し、無形資産として計上することの可否の判断が重要となります。

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公認会計士です。都内の監査法人に勤務しています。会計/監査/税務に関する情報を配信していきます。