スタートアップ企業の消費税について

2019年10月より、消費税率が現行の8%から10%に引き上げられます。これにより多くの企業が影響を受けると思います。今回は、税率の変更に直接関係はありませんが、スタートアップ企業の消費税に関する注意点等について解説していきます。

(1)消費税のしくみについて

はじめに、消費税は特定の物品やサービスに課税する個別消費税とは異なり、消費に広く公平に負担を求める間接税です。
消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付け及び役務の提供と外国貨物の引取りです。
この消費税は、生産及び流通のそれぞれの段階で、商品や製品などが販売される都度その販売価格に上乗せされてかかりますが、最終的に税を負担するのは消費者となります。

(2)スタートアップ企業のための消費税について

起業して2年間は消費税が免除される場合があります。消費税の免除を受けるためには、下記の要件を満たす必要があります。
①資本金が1,000万円未満であること

資本金が1,000万円というのは、「資本金」だけを指します。そのため、例えば、資本金と資本準備金の合計額が1,800万円だとしても、資本金、資本準備金がともに900万円の場合は、資本金が1,000万円未満という要件を満たしていることになります。
②2期目も消費税が免税となるための要件

2期目に関しては、資本金1,000万円未満かつ、以下の条件のどれかを満たす場合は消費税が免除になります。

1.特定期間の課税売上高が1,000万円以下であること

特定期間とは下記の期間をいいます。
・個人事業者の場合…その年の前年の1月1日から6月30日までの期間
・法人の場合…原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6月の期間

2.特定期間の給与等支払額の合計額が1,000万円以下の場合

給与が1,000万円以下の場合でも免税の要件を満たします。なお、給与支払額の計算は、発生したものではなく、実際に支払ったもので行います。そのため、月末締め翌月払いにすることで、1月から6月までの給与として、実質は5ヶ月分の給与のもの計算とすることが可能です。

このような点から、初めの2年間はなるべく社員を雇わないようにすることで、給与を1,000万円未満に抑えることができます。また、人手が必要な場合は、業務委託費を活用することで、給与ではなく、外注費として計上することで給与支払額を抑えることができます。

(3)設立1期目が7ヶ月以下の場合

特定期間に売上高が1,000万円および給与支払額が1,000万円を上回る規模の会社を上回る規模の会社を作る場合は、設立時期を工夫することで免税額を増やすことができる場合があります。

例えば法人の場合は、設立した1期目が7ヶ月以下であれば、特定期間の条件に該当しないため、上記の1と2の要件を満たしていなくても良いことになります。

1期目が7ヶ月以下となるように設立日を調整することで、売上高や給与支払額に関係なく、2気分の消費税が免除されます。

ただし、この場合は、2年間の免除ではなく、最長で1年7ヶ月の免除になります。

(4)免税事業者となる際の注意点

仕入れに係る消費税が控除できるのは、課税事業者に限られます。そのため、免税事業者は還付を受けることはできません。還付を受けるためには、「消費税課税事業者選択届出書」を還付を受けようとする課税期間の初日の前日までに所轄税務署長に提出し、課税事業者となる必要があります。

そのため、起業後、高額な設備や大きな仕入れを行う会社は、支払った消費税額が受け取った消費税よりも多くなり、その差し引き分が還付されることとなります。

そのため、上記のような企業の場合は、消費税の免税対象となるのではなく、自ら課税対象を選択して還付を受けた方が有利となる場合がある点に注意する必要があります。

(5)まとめ

2019年度の税制改革にて、中小企業の成長を狙う改正がなされています。このように、税制により様々な恩恵を受けれるにも関わらず、制度を知らないために優遇を受けれていない企業があるかと思います。今後も様々な税制についても解説していこうと思います。

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公認会計士です。都内の監査法人に勤務しています。会計/監査/税務に関する情報を配信していきます。