(1)勘定科目の特性
企業は一般に営利を追求する組織であることから、経営者や営業担当者が売上高を水増し計上するために取引を偽装し、実在しない取引が計上されるリスクが考えられます。このような点から、売上高には過大計上が行われるリスクがあります。 また、税金の支払額を減少を目的とした利益調整や、入金を着服することを意図して、売上を簿外計上することで、売上が過少に計上されるリスクもあります。 |
(2)リスクとアサーションについて
①架空の売上が計上されるリスク 架空の売上が計上されるリスクに対しては、会社の取引実態に応じた収益認識基準を経理規定や売上計上マニュアルによって明確にした上で、適切な債権管理を行い、取引の受注から商製品の引き渡しまたは役務の提供、会計上の売上計上に至るまでの取引の各段階において担当者以外の第三者が商標のダブルチェックを行い、上長が承認するなどの内部統制を構築することが有効となります。 |
②売上の計上が漏れるリスク 売上の過少計上リスクに対しては、得意先売上高の月次推移のレビューや出荷データと得意先の検修データとのマッチング、販売取引に関する承認体制の構築、特定の得意先からの定期的な入金や重要な入金の上長による確認、仕訳伝票に対する上長の承認などの内部統制を構築することが有効となります。 |
③売上が適切な金額で計上されないリスク 例えば、顧客に対して納品した商品について、合意されている販売価格と異なる価格で計上してしまうリスクがあります。このようなリスクに対しては、売上計時の第三者によるダブルチェック及び、上長による承認、適切な債権管理による長期未精算・消し込み漏れなどの債権の有無を定期的に検証する内部統制を構築することが有効となります。 |
(3)主な監査手続き
①分析的手続(各アサーション) 分析的手続きとは、実績と推定値を比較分析し、増減の有無や乖離の程度を把握し、当該増減や乖離の内容が会社の経営環境に照らして合理的なものであることを質問や関連証憑の閲覧によって確かめる監査手続きです。 分析的手続きには、①期間別、②品目別、③事業部別分析等があります。 予算と実績の比較や前年同期実績との比較分析を実施し、著しい変動があれば、追加手続きによりその内容を検証します。 |
②証憑突合(実在性、網羅性、期間配分の適切性) 金額的重要性がある売上取引や期末前後に計上された売上取引について証憑突合することによって、取引の実在性や会計処理の妥当性を確かめるための監査手続きです。 期末日前途に計上された売上取引に関しては、重要な売上の繰上げ計上ないし、繰延計上がないこと、売上高と売上原価が対応していることを確認することが重要です。 また、期末日直前に売上計上されているものの、翌期に戻し入れ処理をしている取引が識別された場合には、担当者への質問などにより戻し入れの理由を確かめ、期末日直前の売上計上処理の妥当性を検討します。 |
(4)まとめ
今回は売上高に対する主なリスクと主な監査手続きについて解説してきました。今回記載しているものは主なリスクと監査手続きですので、実際の監査の現場では、クライアントごとにリスクや手続き内容が異なってくると思います。 その際には、リスクと手続きの整合性を確認して、手続きの意図を意識することが重要になります。 |
コメントを残す