連結会計とは、親会社と子会社など支配従属関係にある2以上の会社から構成される企業集団を単一の組織体とみなして、親会社がこの企業集団の財政状態および経営成績を総合的に報告する連結財務諸表を作成するために行う会計処理のことです。 連結会計の会計処理には、資本連結、内部取引の消去、未実現理英の消去、持分法に関する論点があります。今回はその中でも応用論点となる、段階取得についてみていきます。 |
目次
(1)段階取得とは
(2)段階取得した場合の支配獲得時の処理
(3)持分法適用会社が連結子会社となる場合の処理
(4)開示について
(5)まとめ
(1)段階取得とは
ある会社が会社を支配して子会社とするパターンとして、一括取得するケースと段階的に取得するケースがあります。株式を1回で取得して支配を獲得した場合を一括取得といい、複数回に分けて取得して、結果として支配を獲得したケースを段階取得といいます。 |
(2)段階取得した場合の支配獲得時の処理
段階取得における子会社への投資勘定は、過去に取得して保有していた株式分も含めて、支配獲得日における時価に置き換えたうえで、子会社の資本勘定と相殺消去します。ここで、過去に取得していた投資勘定を時価に評価替えする際に生じた差額は「段階取得に係る損益(原則として当期の特別損益)として処理します。(企業結合に関する会計基準25項(2)) |
従来から保有していた投資勘定を時価評価するのはなぜでしょうか。それは、支配獲得時に子会社の資産・負債は支配獲得時の時価で評価替えが行われます。これに伴い、子会社の純資産は、支配獲得時の時価に置きかわります。 これに対し、親会社が保有している投資勘定には、過去に保有していた株式が過去の取得原価で計上されておます。この状況のまま、投資と資本の相殺消去を行うと、投資勘定は過去の取得原価、資本は支配獲得時の時価で評価されているため、差額に取得原価と時価の差が混在します。これを避けるために、過去に取得した投資勘定の時価の変動に関わる部分は、段階取得に係る損益として認識し、投資勘定も時価評価します。 |
(3)持分法適用会社が連結子会社となる場合の処理
関連会社の株式を追加取得により支配を獲得し、持分法適用会社が連結子会社となった場合には、支配獲得時において時価評価をやり直す必要があります。 これは、外部の会社が連結子会社となった場合と同様に、支配獲得時の時価に基づいて評価差額を計上することになるので、評価差額計上後の純資産額を親会社持分と非支配株主持分とに按分し、親会社持分を投資勘定と相殺消去します。 このことから、持分法適用会社の株式を追加取得したことに伴い、子会社となった場合は、親会社の投資勘定は支配獲得日の時価で評価し、持分法による評価差額との差額は段階取得に係る損益として処理します。 |
(4)開示について
取得による企業結合が行われた場合は、下記の事項を注記する必要があります。ただし、企業結合に係る取引の重要性が乏しい場合には、注記を省略することができます。 |
一 企業結合の概要 二 連結財務諸表に含まれている被取得企業又は取得した事業の業績の期間 三 被取得企業又は取得した事業の取得原価及び対価の種類ごとの内訳 四 取得の対価として株式を交付した場合には、株式の種類別の交換比率及びその算定方法並びに交付又は交付予定の株式数 五 主要な取得関連費用の内容及び金額 六 取得が複数の取引によつて行われた場合には、被取得企業の取得原価と取得するに至つた取引ごとの取得原価の合計額との差額 七 発生したのれんの金額、発生原因、償却方法及び償却期間又は負ののれん発生益の金額及び発生原因 八 企業結合日に受け入れた資産及び引き受けた負債の額並びにその主な内訳 九 企業結合契約に規定される条件付取得対価(企業結合契約において定められる企業結合契約締結後の将来の事象又は取引の結果に依存して追加的に交付又は引き渡される取得対価をいう。)の内容及び当連結会計年度以降の会計処理方針 十 取得原価の大部分がのれん以外の無形固定資産に配分された場合には、のれん以外の無形固定資産に配分された金額及びその主要な種類別の内訳並びに全体及び主要な種類別の加重平均償却期間 十一 取得原価の配分が完了していない場合には、その旨及びその理由 十二 企業結合が連結会計年度開始の日に完了したと仮定した場合の当連結会計年度の連結損益計算書に及ぼす影響の概算額及びその算定方法(当該影響の概算額に重要性が乏しい場合を除く。) (連結財規第15条の12) |
(5)まとめ
今回は段階取得をメインで解説してきましたが、連結会計には、子会社の一部売却や、時価発行増資、持分法等の論点がまだまだあります。これらについてもいずれ触れていこうかと思います。 |
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