税率差異とは

はじめに、税率差異とは、損益計算書における税金負担率と法定実効税率の差異を意味します。今回は税率差異が発生する理由や、税率差異分析を行う理由を解説していこうと思います。
  • 目次
  • 税率差異が発生する理由
  • 税率差異分析の役割
  • 税率差異分析の方法
  • 税率差異分析を網羅的に把握する方法

①税率差異が発生する理由

税率差異とは、損益計算書に計上されている、法人税等負担率(法人税等の金額と法人税等調整額を税引前当期純利益の額で除したもの)と法定実効税率との差異のことです。会社が税効果会計を適用している場合は、会計上の利益に見合った税金費用が計上されるように、「企業会計」と「税務会計」とのズレを調整しているため、税率差異は発生しないはずです。それでは、なぜ税率差異が発生するのでしょうか。
税率差異が発生する理由は、法人税等負担額が必ずしも下記の算式を満たすものではないからである。

当期法人税等負担額=(税引前当期純利益±一時差異)×法定実効税率

この算式が成立しない理由としては、永久差異が存在することが理由の一つである。永久差異とは、会計上と税務上の差異のうち、当該差異が永久に解消されないものをいう。
永久差異は、それが税務上で加算項目であれば、税金負担率を押し上げ、減算項目であれば法人税等を押し下げる方向に動きます。

②税率差異分析の役割

税効果会計処理に間違いがないかを検証することができる。
→税率差異の発生要因を正しく抽出・集計し、法定実効税率に加算したものが法人税等負担率と乖離している場合には、税効果会計のどこかで間違っている可能性がある。そのため、税率差異分析を行うことで、税効果会計の検算機能としての役割がある。

③税率差異分析の方法

税率差異分析は下記の手順で行うことが一般的となっています。

(1)税率差異の集計を行う。
(2)あるべき法人税負担率の計算を行う。
(3)検証
上記手順で税率差異分析を行う際に、重要なポイントは、差異要因を①漏れなく把握し、法人税等負担率への影響を②正確に計算することである。

税率差異分析を行う際に、税率差異分析用のワークシートを作成することが多いかと思います。この中で、例えば、損金不算入交際費は法人税等への負担額を算出する際に、法定実効税率を乗じた金額を調整するが、住民税の均等割については、法定実効税率を乗じず、金額をそのまま調整する必要がある。

このように、税率差異の要因ごとに、法定実効税率を乗じるものとそうでないものがある点に留意する必要がある。

④税率差異を網羅的に把握する方法

税率差異を漏れなく把握する方法として、法人税等負担額に相当するものとして損益計算書に計上されている金額を分解して差異要因を把握していく方法がある。

【法人税等】
会計と税務での損益の帰属期間の相違は税効果会計が適用されることにより、法人税等負担額の期間帰属が適正化されるため、税率差異の要因とはなりません。

一方、課税所得の計算上加算(減算)された後、将来減算(加算)されているものは税率差異の要因となります。

採用されている法定実効税率の基礎となった税率と異なる税率が課税の一部(または全部)に適用されている場合にも、税率差異が発生する要因となります。

また、課税標準に税率を乗じて計算された金額から控除される金額(税額控除)や、課税標準に税率を乗じて計算された金額に追加して課される税額(住民税均等割額)も税率差異の発生要因となります。

延滞税や過年度法人税等が法人税等に計上される場合にも税率差異が発生する要因となります。

【法人税等調整額】
法人税等調整額に計上された金額のうち、一時差異等の当期発生(解消)に対応する金額以外は全て税率差異の要因となります。

繰延税金資産に対する評価性引当額の増減額に対応する法人税等調整額や、繰越欠損金の期限切れによる一時差異等に対応する法人税等調整額がこれに該当します。

以上より、税率差異が発生する要因、税率差異分析の役割及び方法、税率差異を網羅的に把握する方法を記載しました。差異要因隣やすい項目が書籍にまとまっておりますので、実際に差異分析を行い、差異理由がわからない際は下記に記載した参考文献をご参照いただけると良いかと思います。

【参考文献】税効果会計における税率差異の実務


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公認会計士です。都内の監査法人に勤務しています。会計/監査/税務に関する情報を配信していきます。