固定資産の減損損失について②

昨日は減損損失のグルーピングと兆候判定の際の注意点について解説してきました。今回は、減損の認識、測定、開示の注意点について解説して行こうと思います。

(1)減損の認識の注意点
(2)減損損失の測定の注意点
(3)開示について
(4)まとめ

(1)減損の認識の注意点

減損損失が認識とは、割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を上回っているかどうかの回収可能性テストを行います。資産グループから得られる割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を下回る場合には、減損損失を認識し、次の測定のステップに移ります。
①主要な資産の決定方法

一般に、企業は、当該資産を必要とせずに資産グループの他の構成資産を取得するか、当該資産を物理的及び経済的に容易に取り替えないかなどを考慮して、主要な資産は決定されると考えられるが、資産グループの他の構成資産と比較して、当該資産の経済的残存使用年数の長さや取得原価及び帳簿価額の大きさなども勘案される場合があると考えられる。企業は、これらの要素を考慮して、資産グループの将来キャッシュ・フロー生成能力にとって最も重要な構成資産である主要な資産を、総合的に判断するとされています。

なお、上記事項を勘案すると、土地等の非償却資産や建物等の経済的耐用年数が20年を超える資産を主要な資産とする場合にも、資産グループの将来キャッシュフロー生成能力にとって最も重要な資産であるかどうかに留意する必要があります。

(2)減損損失の測定の注意点

減損損失が認識された資産グループについては、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を当期の損失として減損損失の金額を測定します。回収可能価額とは、資産又は資産グループの正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額と定義されています。
①正味売却価額が観測できない場合

市場価額が観測できない場合に求められる資産又は資産グループの合理的に算定された価額はコスト・アプローチやマーケット・アプローチ、インカム・アプローチによる見積方法が考えられ、資産の特性等によりこれらのアプローチを併用又は選択して算定することとなると考えられます(適用指針第109項)。各種の詳細については、適用指針第109条(1)から(3)をご参照ください。
②将来キャッシュフローについて

減損会計における将来キャッシュ・フローは、企業にとって資産又は資産グループがどれだけの経済的な価値を有しているかを算定するために見積られることから、企業に固有の事情を反映した合理的で説明可能な仮定及び予測に基づいて見積ることとされています。この、合理的で説明可能な仮定及び予測における留意点が適用指針第36項に記載されております。気になった点だけ抜粋して、下記に記載いたします。
(1)基本的には、企業は取締役会の承認を得た中長期計画を基に、各資産又は資産グループの将来キャッシュフローを見積もる。

(2)中長期計画が存在しない場合は、企業の外部要因や内部の情報をもとに、将来キャッシュフローを見積もる。

(3)中長期計画の見積もり期間を超える期間の将来キャッシュフローを算定する場合は、原則として、取締役会の承認を得た中長期計画の前提となった数値に、それまでの計画に基づく趨勢等を踏まえて見積もりを行う。

(4)将来キャッシュフローの見積もりは現金基準や発生基準に重要な日資金損益項目を加減した金額を用いることができる。

(3)開示について

【貸借対照表における表示】

減損処理を行なった資産の貸借対照法における表示は、原則として、直接控除形式によるが、減価償却を行う有形固定資産については、独立間接控除形式又は合算間接控除形式によることもできる。この際、減損損失累計額と減価償却累計額の性格は異なると考えられることから、貸借対照表において、減価償却累計額の表示形式と同じものとなる必要はないと考えられる(適用指針第 57 項参照)。
【注記】

重要な減損損失を認識した場合には、減損損失を認識した資産、減損損失の認識に至った経緯、減損損失の金額、資産のグルーピングの方法、回収可能価額の算定方法等の事項について注記するとしている。これらは、特別損失に計上される減損損失に係る注記事項であるため、損益計算書に係る注記事項とすることが適当であると考えられる(第 58 項参照)。

使用価値の算定に際して使用した割引率については、資産又は資産グループの収益性を反映する情報であることから、注記事項に含めることとされています。ただし、対外競争条の企業秘密を開示することにつながる恐れのあるとの指摘があることから、少なくとも割引率のみを開示すれば足り、その算定方法までの開示までは求められないと考えられます。

回収可能価額の算定方法の注記事項に関しては、回収可能価額が使用価値の場合はその旨および割引率の開示は行われるが、経済的残存しよう年数の注記は求められないとされています。

(4)まとめ

固定資産の減損については、固定資産の減損にかかる会計基準の適用指針に様々な情報が記載されていますので、何か悩む点があったら適用指針をご参照いただけると良いかと思います。

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公認会計士です。都内の監査法人に勤務しています。会計/監査/税務に関する情報を配信していきます。